ショックに対する輸液療法!看護に必要な簡単知識

ショック状態の患者さんをみたことがある方は多いと思います。

ほぼ全例で輸液をしていますよね?

 

ドラマでも、救急室などでは「輸液全開!」などそれっぽい光景をみると思います。

 

ソリタT1とか、輸液の商品名で覚えている方も多いと思いますが、輸液っていろいろ種類があります。

そもそもなぜ輸液をしているのでしょうか?

医師がなぜこの輸液を選択したのか、今どのような治療をされているのかがわかると看護のアセスメントの幅が広がります。

 

今回は輸液療法、特にショック後についてまとめてみたいと思います。

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ショックでの輸液療法

ショックとは

ショックとは血圧が低下した状態と誤解している方が多いと思います。

(私は当たり前のように誤解していました)

 

厳密には、ショックとは「組織への灌流が不十分なために起こる臨床的症候群」と定義されています。

灌流とは、臓器に酸素を運搬するのが目的ですので、

要するにショックとは、酸素供給と酸素需要のバランスが崩れている状態だそうです。

 

血圧が低下していなくても、このバランスが崩れて、灌流が不十分であればショックといいます。

しかし、重症になれば血圧も低下しますので、ほとんどショック=血圧低下と認識されています。

 

一応この定義は理解したうえで、今回は血圧が低下しているショックについての輸液療法をイメージしてください。

輸液療法

とりあえず血圧を上げたかったら、血管内にある循環血液量(ボリュームといったりします)を増やさないといけません。

専門用語で言うと、「前負荷」をあげるということです。

*血圧については、以下のサイトでまとめてみましたので、よろしければ参考にしてみてください。

看護に必要な平均血圧値(MAP)!血圧の種類とその意味

 

循環血液量を増やすために、直接静脈に送り込むのが輸液です。

 

病院にある輸液製剤は多くの種類があると思います。

簡単に言うと、ショックに使うのは2種類と考えればいいそうです。

・生理食塩水

・リンゲル液

です。それ以外の輸液は今回はあまり出番がありません。

これについて、簡単にまとめてみます。

体内の水分の分布

人間の体の約60%を水が占めています。

→そのうちの3分の2が細胞の中(細胞内)、3分の1が細胞の外(細胞外)です。

→さらに、細胞外の4分の1が血管の中にあることになります。

*だいたい血管内の水分は体重の5%に相当するといわれます。

わかりにくいので、図にしてみました。

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投与した輸液の分布

輸液は静脈から血管にいれますが、その後どうなるかわかりますか?

(私は、昔はあまり考えていなかったです・・・)

 

輸液はいつまでも血管にとどまるわけではありません。

しかし、投与した輸液によって、とどまり方が違うのでまとめてみました。

 

<5%ブドウ糖液を投与した場合>

ブドウ糖は体内に入るとすぐに細胞に取り込まれてしまうので、5%ブドウ糖液を入れるのは水を投与するのと同じだそうです。

水は血管内、間質、細胞内を自由に行き来できるので、元の割合とおりに分布することになります。

 

<生理食塩水、リンゲル液を投与した場合>

生理食塩水のNa+は細胞外(血管内と間質)にのみ分布し、水はNa+に引っ張られて(この引っ張る力を張度といいます)、同じく細胞外にとどまります。

上の図のように、細胞外液のうち血管内と間質の割合が1:3ですので、輸液した生理食塩水の4分の1が血管内に残ることになります。

リンゲル液のNa+濃度(130mEq/L)は生理食塩水(154mEq/L)に比べて若干低いですが、ほぼ同様の分布になります。

 

<開始液(1号液)を投与した場合>

開始液(商品名:ソリタT1)を投与した場合を考えてみます。

ソリタT1を使用することは多いですよね。

この1号液といわれる輸液は、Na+の濃度が90mEq/Lですので、これを1L輸液することは、

血管内の循環血液量に対して、生理食塩水0.58L+5%ブドウ糖0.42Lを輸液したのと同じ計算になります。

となると、1号液はショックのときには不十分で、適応外になります。

 

輸液の組成によって投与した輸液の分布が変わるわけですが、簡単に図にしてみます。

図:投与した輸液の分布

 

 

表:主な輸液の組成

晶質液:生理食塩水、リンゲル液

生理食塩水やリンゲル液のように細胞外に分布する輸液を昌質液といいます。

ショックの輸液には、この細胞外液である生理食塩水かリンゲル液になります。

 

では、どっちがいいのか?ということですが、

どちらか一方というと、リンゲル液のほうが使いやすいと言われています。

生理食塩水ばかり投与すると、高CL-血症を伴う代謝生アシドーシスをきたしてしまうからだそうです。

(これについては、大規模な臨床試験があるわけではないようで、医師の考えによるところもあるそうです)

しかし、リンゲル液は、カリウムも含まれていますので高カリウム血症のある場合には注意が必要なようです。

膠質液:アルブミン

アルブミン分子は大きく、血管壁を容易に通過しないため、投与したアルブミンはほぼ全て血管内にとどまります。

アルブミンのように血管内にとどまる輸液のことを膠質液といいます。

 

それであれば、敗血症のように血管内に循環血液量をとどめておくことが難しい場合は、アルブミンが最も適した輸液のように思えますよね。

 

重症敗血症、敗血症ショックの患者さんを対象にしたRCTの臨床研究(ALBIOSという名称)では、晶質液に加えて血清アルブミン3.0g/dLを目標にアルブミンと投与した群と、晶質液のみを用いた群にわけて比較しました。

その結果では、28日死亡率に有意差はありませんでした。

つまりどちらでも一緒という結果になったのです。

 

効果が同じであれば、容易に使えて安価な方がいいですよね。

ということで、アルブミンではなく、

晶質液

  • 生理食塩水
  • リンゲル液

がショックへ使う輸液になるのです。

まとめ

  • ショックに使用される輸液についてまとめました。
  • ショックでは生理食塩水とリンゲル液が輸液療法として選択されます。
  • 体の水分、水分の分布を意識すると細胞外液がショック状態に有効なことがイメージできます。
  • 大規模な臨床試験の結果などから、臨床で使用される輸液が決定されています。

 

今回は輸液の基礎から、ショックに使用される輸液をまとめてみました。