「心不全の再入院予防:ASV」 JCS2019学習報告②

第83回日本循環器学会学術集会に参加してきました。

 

講演を聞いて、刺激になった、勉強になった内容を、まとめて書きたいと思います。

 

新しい知識は楽しいですね。

2つ目の報告です。

スポンサードサーチ

心不全へのASV療法とは?

30日のランチョンセミナー

「もっと減らせる心不全再入院〜前方視コホート研究:SAVIOR-L実施にあたり〜」

という講演を聞いてきました。

 

「心不全パンデミック」と言われる、心不全患者の急増が問題とされています。

そんななか、心不全の再入院予防は国をあげて取り組まないといけない状態です。

 

適切な内服管理、心臓リハビリテーション、塩分管理など、心不全管理は様々あります。

そんな中、今回は「心不全患者へのASV療法が心不全再入院に効果的ではないのか」というテーマでの講演です。

 

ASV(Adaptive-ServoVentilator)とは、オートセットCSを利用した陽圧換気療法の一種です。

オートセットCSはマスク式人工呼吸器(NPPV)の一種になり、TEIJINの商品になります。

 

オートセットCSは、患者さんの呼吸を学習し、その呼吸パターンに同調して滑らかに圧力を供給する機能を装備することにより、陽圧呼吸療法に対する忍容性の向上を目的とした治療機器です。

(患者さんが多く吸ったときには少ない圧、少ししか吸わなかったら大きい圧になります)

従来の換気効率を追求した圧力波形ではなく、オーシャンウェーブと言われる患者さんの快適性を追求した波形になります。

 

詳しくはTEIJINのHPに図とともに解説されています。

https://medical.teijin-pharma.co.jp/zaitaku/remedy/asv/01/

 

心不全患者さんのうっ血をとるには、PEEPが有効的です。

その生理学的根拠を利用し、在宅でも、慢性心不全患者さんにも使用することで、心不全増悪を予防しようとするわけです。

印象に残った内容

SERVE-HFの衝撃

日本でも実臨床で心不全患者さんにASV療法がされていたのですが、

ある論文が心不全患者さんへのASV療法に衝撃を与えました。

 

NEJMという世界的な論文雑誌に掲載された、SERVE-HFという研究です。

 

この論文により、心不全患者にASV療法を行うと、何もしなかった群に比べて予後不良と判明してしまったのです。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1506459?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dwww.ncbi.nlm.nih.gov

 

このように、全てにおいてASVをしたほうが不良といる結果になってしまったのです・・・

 

実は、この論文が掲載された直後の「心臓リハビリテーション学会」に私は参加していました。

そこで、たまたまASVのセッションに出たのですが、座長が神妙な顔つきでこの論文を紹介したのを覚えています。

学会のプログラムとしては、演者もASVの有効性を話そうとしていたのに、準備中にこんな論文がでてしまって、相当焦ったと思います。

 

この論文をうけて、心不全患者さんへのステートメントでは、論文と同じような対象者にはASVは使用しないような通知がでました。

SAVIOR-Lへ

しかし、実際の臨床現場では、

難治性の慢性心不全患者に、ASVを導入すると自覚症状が改善したり、再入院を予防できる症例がいるのも事実です。

 

日本の高名な医師たちは、この実経験と心不全患者へのPEEP効果を信じて、新たな臨床試験をすることになったのです。

 

先ほどのSERVE-HF試験の対象者は


・心不全患者

・EF<45%

中枢性の無呼吸症候群(チェーンストークス呼吸)


となっています。

サブ解析から、EF<30%とより低心機能の患者さんで予後が悪いとの結果だったようです。

このことから、過剰なPEEPが心拍出量を下げ過ぎて、予後を不良にしたと解釈されています。

 

中枢性の無呼吸症候群を対象にしていたため、PEEPも高くかかっていた臨床試験でした。

 

このSERVE-HF試験の対象者からとは別に、

うっ血症状が主症状の患者を治療ターゲットにした研究を行うことになりました。

(中枢性無呼吸<うっ血症状 をターゲットに変えた)

うっ血により慢性心不全患者が多いという背景が、欧米と日本の違いでもあり、

日本でうっ血症状に対する臨床試験を行う意義があるそうです。

 

そこで臨床試験を開始したのが

「SAVIOR-L(セイバーL)」試験です。


  • 多施設研究
  • 前向き研究
  • 繰り返す心不全患者を対象
  • 治療ターゲットをうっ血症状
  • PEEP圧をかけすぎる必要がない(PEEP5程度)

などを、特徴とした臨床試験です。

 

現時点ではまだ、研究結果がでてなく、今回の講演でも症例報告程度でした。

スポンサードサーチ

まとめ

  • 慢性心不全患者へのASV療法の可能性を示した講演でした。
  • 世界的に衝撃を与えた「SERVE-HF試験」を考察し、日本の臨床に即した「SAVIOR-L(セイバーL)試験」が開始されます。
  • 臨床試験の結果によっては、慢性心不全管理の方法が変わり、心不全の再入院減少に役立つかもしれません。

 

今後「SAVIOR-L(セイバーL)試験」が、どのような結果になるのか楽しみです。

これで結果がでなければ、慢性心不全患者の安定期の管理にASVが使用されることはなくなると思います・・・

 

不十分な内容であったと思いますが、学会参加の学習報告②としてまとめさせていただきました。