看護に必要な平均血圧値(MAP)!血圧の種類とその意味

血圧測定は日々の看護業務で測定していますよね。当たり前のように毎回カルテ記載もしていると思います。

一般病棟や在宅では「血圧」というと、140/70などと記載していますよね。

これは、収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)を示しています。

そんなことは誰でもわかっていると思いますが、ここに「平均血圧」が隠れていて、平均血圧が何を意味しているのかはわからない方もいるのではないでしょうか?(私がそうでしたので・・・)

そしてそれぞれの血圧が何を意味しているのでしょうか?

今回は意外と診られていない「平均血圧」と、その重要性についてまとめてみました。

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血圧の種類とそれぞれのアセスメント

3つの血圧値

血圧について簡単に整理してみます。

血圧とは・・

心臓のポンプ作用によって全身に送り出された動脈圧が血管内で示す一定の圧力

心臓は全身に血液を送り出すポンプになっているので、収縮と弛緩を繰り返して働き続けます。

収縮期血圧と拡張期血圧

心臓が収縮したことで、勢いよく送り出された血流により動脈の血管内にかかる圧が収縮期血圧

心臓が弛緩して、静脈から心臓に血液を貯めているときに動脈の血管内にかかる圧が拡張期血圧です。

ここで血圧についてもう1つ重要な値が、「平均血圧」という血圧です。

平均血圧とは・・

常に動脈にかかっている圧力の平均的な値です。血圧の変動を波形にした、脈波の占める面積を平均化したものとも言います。

平均血圧(MAP)=脈圧÷3+拡張期血圧  で求めることができます。

脈圧:収縮期血圧と拡張期血圧との差のことです。120mmHg/80mmHgであれば、脈圧は40mmHgになります。基準値は40〜60mmHgの範囲です。

残念なことに、血圧計では数値として表示してくれないんですよね。

ICUなどではAラインからも随時計算されてモニターにでていますので、ICU勤務の方は見慣れていると思います。

臨床現場では、だいたいでいいので計算するくせをつけて、「低いな」「危険だな」と思ったら正確に数値にするように計算しています。(慣れると結構簡単です。)

血圧の種類によるアセスメントのポイント

3つの血圧値を知っていても、それが何を示しているかがわからないと看護のアセスメントはできません。

正常値を知っているから安心ではなく、正常値だとしても日々の変化から考えられるアセスメントがあります。

また、異常値になっていたときにリスクの度合いがわかるので、経過観察なのか、医師に報告すべきか判断できます。

以下に、3つの血圧とその意味を示しました。

臨床的なアセスメント例

・脳出血後は高血圧に気をつけないと再出血してしまいますので、注意すべきは収縮期血圧です。

・大動脈解離などの大血管病変の管理でも注意すべきは収縮期血圧です。破裂が最もリスクですので。

・心筋梗塞など、冠動脈の血流の確保が必要な場合(虚血を防ぐ)は、拡張期血圧が重要です。

・敗血症などで、全身の臓器灌流不全が疑われる場合には、平均血圧が重要です。

このように、病態によっても血圧のアセスメントが変わってきます。

血圧を規定する因子と各モニタリング指標

血圧は様々な要因で変化します。

何が原因で血圧が上がったのか、下がっているかが把握できると対処法もわかってきます。

血圧を規定する式を以下に示します。(見えにくい場合は図をクリックして拡大してください)

血圧変動の例

・敗血症では、末梢血管抵抗が低下するので血圧が下がります。→血圧を維持するために、前負荷を増やす目的で輸液をしたり、末梢血管を収縮させるためにノルアドレナリンを投与します。

・心筋梗塞では、心筋の動きが低下するので、心収縮力が低下して血圧が下がります。心エコーなどで評価できます。

これは簡単な例ですが、このように病態と血圧が変化する原因を考えることが大事になります。

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救急や集中治療の現場では平均血圧をみる!

ではどの血圧が重要なのでしょうか?

それは、その時の病態によって変わっていきます。

先ほどの例でもお示ししましたが、脳出血や大動脈解離など、血管に高圧をかけたくない場合は収縮期血圧ですし、心筋梗塞や狭心症は拡張期血圧です。

一概にどの血圧が重要とは言えないのですが、

生命を保つため、救急の現場で最重要視される血圧は、「平均血圧」です。

(私は、ICUで働くまでは「平均血圧」の重要性を理解していませんでした。)

血圧が低下してショック状態になることで、脳や全身の臓器に血流が行かなくなって臓器障害におちいってしまいます。

その時に全身に必要な血流をおくれている目安が平均血圧になるからです。

平均血圧が下がれば、組織の低循環、重要組織への血流不足をまねき、各臓器への流入する血液量が低下し、代謝異常や臓器不全を引き起こしショックを起こす可能性があります。

日本敗血症診療ガイドラインでは、敗血性ショック時の治療に際して平均血圧値を65mmHg以上に保つことを推奨しています。

収縮期血圧だけをみても、全身の臓器まで十分な血流がいっているかはわからないんですね。

病態による血圧のモニタリングが必要ですので、どの血圧が最も重要かは患者さん毎に変わっていきます。

しかし、平均血圧の重要性がわかれば、日々のモニタリングの幅も広がると思います。

血圧調整因子

血圧を規定する因子とそのモニタリングは先ほどお示ししましたが、血圧を調整する因子も様々あります。

この因子を利用して、薬物療法などで血圧を調整するのですが、それぞれの特徴を下に示します。(見えにくい場合は図をクリックして拡大してください)

今どこに対して治療されているのか、なぜ患者さんの血圧が異常値になるのか、1つの目安になると思います。

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循環について学べるオススメ書籍

血圧をはじめ、循環について知識が深まってくるとどの臨床現場でも役にたちます。

逆に循環が理解できないと、看護も離床もしっかり行うことはできません。

今回ご紹介したMAPなどの血圧だけでなく、循環を学べるオススメ書籍をご紹介します。

以下の3つがとてもオススメになります。

この3つの書籍は、循環を学ぶのにとてもオススメですので、以下のサイトにオススメポイントも解説していますので、参考にしてください。

循環器のオススメ書籍3選!初心者、学生だけでなく臨床でも有用!

まとめ

  • 血圧を測定するときは、収縮期血圧、拡張期血圧に加え、平均血圧に注意する必要があります。
  • 病態によって注意すべき血圧の種類は変わってします。
  • 重要臓器に血液がいっているかは平均血圧で考えるので、救命の現場では平均血圧が重要になります。
  • 血圧を規定、調整する因子は様々で、モニタリングの方法も多くあります。
  • なにが起こっているのか、どこに治療をしているのかがわかると、アセスメントの幅がひろがります。

今回は意外と見落とされがちが「平均血圧」を中心に、血圧の種類や規定因子をまとめてみました。

少しでも日々の臨床の参考になれば幸いです。