第83回日本循環器学会学術集会に参加してきました。
講演を聞いて、刺激になった、勉強になった内容を、まとめて書きたいと思います。
新しい知識は楽しいですね。
4つ目の報告です。
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循環器のPhysical Examination
3日目のモーニングセミナー
「達人から学ぶ心臓診察の極意」というセッションに参加してきました。
3人の医師が、循環器診療の基礎である、身体診察について講義をしてくださいました。
学会の中のミニセミナーみたいな内容です。
テーマとして循環器のPhysical Examinationについてです。
フィジカルアセスメントとの違いについては、以下の記事を参考にしてください。
フィジカルアセスメント!フィジカルイグザミネーションとの違い
毎年神戸で開催されている循環器Physical Examination講習会というものがあります。
2019年も1月に開催され、参加したかったのですが、結婚式と重なってしまい断念しました。
次年度こそ参加したいのですが、今回の学会でそのメンバーの先生が講義をするので聴いてきました。
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頸静脈の診かた
循環器のPhysical Examinationにも様々な種類があります。
そんななか、問診と同時に観察すべきであり、心不全をアセスメントしやすい頸静脈の診かたについてレクチャーしてくれました。
つまり、右心不全の状態に陥っていないかが、視診だけでわかることがあるのです。
頸静脈の診察では、上記のような「頸静脈圧の推定」だけでなく、「頸静脈波形の分析」も行うそうです。
頸静脈波形の分析は専門知識がより必要とのことですので、今回は「頸静脈圧の推定」のみまとめます。
原則として右の頸静脈を診察します。
仰臥位で頸静脈拍動の上端が顎下まで確認できることは正常です。
しかし、
座位になっても、鎖骨上に頸静脈の拍動が確認できたら明らかに右房圧があがっている(15mmHg以上)ことがわかります。
*心臓から離れて、静脈拍動が見えたり見えなくなったりする点を拍動の最高点とするそうです。
実は私も、頸静脈を観察したことがありますが、頸静脈の走行上、頚動脈の近くを通っていて鑑別に迷うことがありました。
今回は頸静脈と頚動脈の鑑別ポイントも講義していましたので、以下にまとめてみました。
頸静脈圧の上昇
「座位で頸静脈拍動が鎖骨上に観察」できるときは、頸静脈圧の上昇と判断するそうです。
一般に右心不全、体液貯留を考えます。
肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などの閉塞性ショックでも頸静脈圧が著明に上昇するそうです。
頸静脈圧の低下
本来見えるはずである、「仰臥位でも頸静脈圧拍動が観察できなければ」、頸静脈圧は低下と判断するそうです。
出血や脱水などの、ボリューム不足で頸静脈圧は虚脱するそうです。
看護にどのように活かすか
医師の学会であり、医師の視点での講義を聴いてきました。
しかし、身体診察ですので、もちろん医師だけが行うものでもありません。
医師は外来診療で身体診察を駆使することが多いと思いますが、入院した患者さんの日々のアセスメントは看護師や理学療法士のほうが行える環境が多いと思います。
医師は診察をしないといけないので、より高度の技術と知識が必要かもしれません。
看護師はある程度診察された患者さんをアセスメントするので、患者情報を把握した時点で身体診察が行えます。
その点は、医師と同等の技術を持ち合わせていなくても、「医師と同じ視点」があれば十分対応できると思います。
例えば心不全で入院した患者さんをアセスメントしたとします。
数日は利尿が効いて尿量も増えてきましたが、昨日あたりから尿量も減り、昨日まで座位でみえていなかった頸静脈が観察できるようになったらどうでしょうか?
これだけでも、心不全の再燃が予想され、すぐに医師に連絡して次の手をうってもらえます。
ある程度状態を把握している場合は、モニタリングもしやすく、その手法(Physical Examination)さえ理解できれば十分対応できます。
在宅に向かう訪問看護師さんなどは、病院看護師以上にこのPhysical Examinationが重要になってきます。
(自分で判断することは迷いますが、技術があれば自信をもって判断できると思います)
このように、頸静脈の診察ができるだけで、
医師より先に、毎日接している看護師が患者さんの異常を察知して、適切な医療を提供できる可能性があります。
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まとめ
- 身体診察は循環器診療の基本になります。
- 頸静脈の視診は、身体診療のなかでも容易に診察でき、有益な情報を得られる技術です。
- 医師だけでなく、看護師も診察できることで、より適切な医療を提供できます。
最新の医療報告が多い学会ですが、何十年も前から朽ちることのない身体診察を見返すことも重要であることを実感できました。
また、特殊な機械が必要なわけではなく、明日から使える技術だと思います。
簡単ではありますが、頸静脈診察についてまとめてみました。