(2020年4月27日執筆)
2020年4月27日現在、COVID-19(コロナウイルス)による世界的な影響は終息せず、日本でも緊急事態宣言が発令されています。
医療崩壊が懸念されるなど、医療現場での緊張がさらに増している印象です。
そんななか、COVID-19に対する医療方針として、成人COVID-19症例に対するガイドラインが発表されましたので、ご紹介します。
手探りのなか医療の現場に携わっている方としたら、確実ではないとしてもこのような未知の病気に対する指針が報告されるのは非常に重要ですよね。
医師だけでなく、看護師、理学療法士など医療従事者の方々は知っておいて損はないと思います。
今回は、論文(ガイドライン)の紹介と、一部のRecommendation(推奨治療)について日本語で集約していきます。
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目次
Intensive Care Medicineから掲載される論文であり、101ページにもなる膨大な内容が記載されています。
12ヶ国36名の著名な専門家からまとめられた内容で、現時点ではとても参考になる内容がまとめられています。
無料公開されていますので、以下のリンクから原文のPDFを取得することができます。
原文を持っていない方はまずは見てみてください。
日本語訳:Recommendation(推奨治療)を一部抜粋
50にもなるRecommendationが記載されていますが、一部を日本語でご紹介したいと思います。
気管挿管施行時には可能であれば喉頭鏡を用いる。
最も技術のある医師が挿管する
挿管はエアロゾルの影響を最もうける医療行為の1つですから、なるべく近づかずに正確に挿管するために喉頭鏡を使用したり、最も素早く挿管するために技術のある医師が行うように進められています。
医療従事者の感染拡大を最大限に予防するための内容ですね。
ショックを伴うときの目標MAPは60-65とする
従来のSepsisをはじめとするショック状態のときの、MAP(平均血圧)の目標値は65以上とされていました。
しかし、COVID-19の場合は60程度でよいとの報告です。
MAPに関しては以下のサイトでも解説しているので参考にしてください(従来の管理)
SpO2<92%のときに酸素投与を開始し、96%未満を目指す
酸素マスクで改善しないときにHFNCを使ってもいい
NPPV(NIV)は使わない。
呼吸不全に対する酸素療法に対する指針です。
特徴としては、NPPVの使用を推奨しないことで、エアロゾル発生による感染の可能性を考慮したものになっています。
(HFNCでもエアロゾルの危険性はあるようですが、NPPVはしっかりダメみたいですね)
低一回換気量を目指す。Vt4-8ml/kgが望ましい
プラトー圧は30cmH2O未満で高PEEPを目指す
これに関しては人工呼吸器管理の指針ですが、ARDSに準じた肺保護戦略の内容になっていますね。
*別の論文、報告では、COVID-19の病気によって、急性期はARDSと全然違う病態で、その時期は肺保護戦略に否定的な意見もあります。後半はARDS用となり、同等の管理なようですが。
やはり、まだはっきりわかっていないところでもあるわけですね。
中等から重症ARDS(P/F<200)には腹臥位療法を12〜16時間行う
ARDSとなった場合は、従来のように腹臥位療法が推奨されていました。
他の治療がだめならVV ECMOを考慮する
今国内でも認知度が一気に上がっているVV ECMOですが、やはり最後の砦のような扱いですし、より急性期に使用したほうがいいとの見解もあります。
しかし日本でもVV ECMOができる病院は限られていますし、救命率が低いことが現実でもあります。
少なくとも安易に使える医療行為ではないですね。
現在はエビデンスのある抗ウイルス薬などの特効薬はない
やっぱりこれが問題ですよね。
人工呼吸器管理は従来であれば原疾患が治るまでのその場しのぎの肺にはつらい治療なわけで、あくまで原疾患の治癒が最も重要です。
その原疾患の治癒に効果的な薬剤がないので拡大がとめにくいわけですし、脅威ですよね。
いろいろ試されてはいますが、圧倒的に効果がある薬は発見されていない、開発されていないので、一刻も早い発見を期待しています。
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まとめ
COVID-19が世界的大問題になってまだ日が浅いですが、早くもガイドラインが発表されてきています。
それだけ大きな問題になっているということですが、日本もこの指針を参考にしながら対応していくしかありませんね。
おそらく、今後さらに臨床・研究が進む、正確なガイドラインへとアップデートしていくと思われますので、今後の研究にも注意が必要です。
このような事態ですので、取り急ぎ論文・ガイドラインの紹介をさせていただきました。
参考になれば幸いです。
原文は以下から取得することができます。