【論文紹介】急性期脳卒中患者はベッドアップすべき?

今回は論文紹介をしたいと思います。

急性期(発症後24時間)脳卒中患者の適切なポジショニングについてです。

 

「急性期は仰臥位にしたほうが脳血流がたもたれるからいい」

「誤嚥性肺炎予防のためにもベッドアップがいい」

 

など、急性期のポジショニングに関わる疑問は解明されていません。

そこで今回の論文は、急性期脳卒中患者のポジショニングはベッドアップ30度程度がいいか、仰臥位がいいか究明した論文です。

大規模なRCTであり、NEGJに掲載された論文ですので簡単にまとめてみました。

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急性期脳卒中患者のポジショニングについて

背景として急性期のポジションングについてまとめてみます。

今回は急性期の臥位 VS 半座位(ベッドアップ30度)がテーマです。

 

脳卒中ガイドラインを参考にすると・・・

・低酸素血症、気道閉塞、誤嚥あるいは頭蓋内圧亢進がある場合は、15〜30度の頭部挙上を考慮してもよい(グレードC1)

・主幹動脈の閉塞が高度狭窄のある症例では、脳血流維持を目的として水平仰臥位をとることを考慮してもよい(グレードC1)

引用:脳卒中ガイドライン2015より

となっていますが、いずれも強い推奨はなしです。

 

両者のメリットをこれまでの論文から考えると・・・

【仰臥位のメリット】

  • 半座位に比べて、仰臥位のほうが脳動脈の平均血流速度が増加する(Cerebrovasc Dis 2014;37:401-8)
  • 仰臥位のほうが脳の酸素化が上昇する(Age Ageing 2008;37:581-5)

 

【半座位(ベッドアップ)のメリット】

  • 呼吸器合併症のある急性期脳卒中患者は臥位では酸素飽和度低下に繋がる可能性がある(Clin Rehabil;2004;18863-871)
  • 誤嚥性肺炎予防になる(VAPバンドルにも遵守できる)

 

ということで、どちらもメリット・デメリットが考えられますが、ガイドラインでも明確に示されていない現状です。

そこで今回の論文になります。

Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke

【論文紹介】

Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke

N Engl J Med 2017; 376:2437-2447 PMID28636854

 

9カ国、114施設のRCT

 

P:急性期脳卒中患者

I:発症24時間の臥位

C:発症24時間30度の半座位

O:発症後90日での機能障害

 

【結果】

11093名

座位群:5295名 vs  臥位群:5798名

年齢:68歳(中央値)

NIHSS:4(中央値)

 

<主要評価項目>

発症後90日:mRSは有意差なし

*mRSは脳卒中患者の機能自立度の指標。6段階で評価されます。

mRS(modified Rankin scale)

0:まったく症候がない

1:症候はあっても明らかな障害はない。日常の勤めや活動は行える

2:軽度の障害。発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える

3:中等度の障害。何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える

4:中等度から重度の障害。歩行や身体的欲求には介助が必要である

5:重度の障害。寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする:

6:死亡

*虚血性脳卒中と脳出血を分けても同様に有意差はなしでした。

*NIHSSによる重症度、発症から介入までの時間を層別化しても90日語のmRSには有意差なしでした。

 

<副次的評価項目>

死亡率、肺炎の合併、重篤な合併症などにも有意差はなし

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結論

急性期脳卒中患者の発症後24時間の体位は、仰臥位と半座位では、神経学的予後および合併症発症に有意差を認めなかった。

まとめ・感想

  • 脳梗塞発症後はとりあえずベッドアップもしない臥位を推奨しているような印象があるが、根拠がないことがあらためて理解できました。
  • しかし、ベッドアップすることが推奨される結果でもなかったのは少し残念でした(個人的にはリスクがなければベッドアップしたほうがいいと思っていたので)
  • 明確な基準がない以上は個々の状態に合わせる必要があるとの見解になりますが、ルーチンでベッド上臥位にする必要がないことを後押ししてくれる論文でした。
  • この論文にとらわれず、重症例などはその都度判断する必要があることは注意しないといけません

 

とても大規模な臨床研究のRCTであり、入院直後の看護を手助けしてくれる論文だと思います。興味があれば是非以下の原著論文をご確認ください。

Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke

N Engl J Med 2017; 376:2437-2447 PMID28636854