リスク比・オッズ比とは?EZRでの実践

今回は研究でよく使用され、論文でも度々登場してくる「リスク比とオッズ比」についてご紹介します。

聞いたことがある方は多いと思いますが、よくわからない内容ではないでしょうか?(私はそうでした)

「リスク?」「オッズ?」似たようで違うところなので余計混乱するんですよね。

今回はそんな「リスク比とオッズ比」を例も交えて簡単にまとめてみました。

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リスク比とオッズ比は危険率を表す指標

リスク比(risk ratio)、オッズ比(odds ratio)についてまずは少し専門的に解説します。

どちらも、分割表をもとにした危険率を表す指標です。

わかりにくいので、以下に分割表を使用した図とリスク比とオッズ比の求め方を提示します。

これがリスク比とオッズ比の違いです。

・・・よくわからないですよね。

実際に具体例をいれて簡単に詳しく解説していきます。

リスク比とオッズ比の違いを簡単に解説

先ほどの分割表に疾患として「COPD」、暴露として「喫煙」をあてはめてみていきます。

こんな感じであったとします。

ここでリスクとオッズについてですが・・

リスクとオッズ

リスク=イベントが起こった人数÷追跡された人数(割合)

オッズ=イベントが起こった人数÷イベントが起こらなかった人数

となり、みているものが違います。

リスクとリスク比について

先ほどの例でリスクとリスク比をみてみると

リスク=「イベントが起こった人数÷追跡された人数(割合)」でしたので

喫煙者のCOPDのリスク→40÷49=0.81..(81%)

非喫煙者のCOPDのリスク→7÷51=0.13..(13%)

リスク比→(40÷49)÷(7÷51)=5.94..

ということになり、喫煙者は5.9倍の確率でCOPDになりやすいとなります。(実際の疫学とは異なり、今回の例題での結果です)

オッズとオッズ比について

それではオッズとオッズ比についてみていきます。

先ほどの例でオッズとオッズ比をみてみると

オッズ=「イベントが起こった人数÷イベントが起こらなかった人数」でしたので

喫煙者のCOPDのオッズ→40÷9=4.44..

非喫煙者のCOPDのオッズ→7÷44=0.15..

オッズ比→(40÷9)÷(7÷44)=27.93..

となり、リスク比とオッズ比では違いがあるのがわかると思います。

ここで、オッズについての注意ですが、オッズ比を求めてもリスク比と混同して「27倍」COPDの確率が高くなると間違えないようにしないといけません。

オッズ比の解釈

1より大きい:喫煙者のほうがCOPDの発症率が高い

1     :喫煙者も非喫煙者も発症率に差がない

1より小さい:喫煙者のほうがCOPDの発症率が低い

となります。

また、イベント率が高くなればなるほど、リスク比とオッズ比の違いが大きくなります。(今回は全然違いましたよね)

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なぜ研究でオッズ比を使うのか?

なぜ、馴染みやすいリスクだけでなく、オッズを研究で使用するのでしょうか?

リスク比はコホート研究に使用され、オッズ比はケースコントロール研究で使用されます。

なぜ研究デザインによって違うのでしょうか?

リスク比:コホート研究

リスクとはイベントが起こる確率です。

リスクはイベントの起こっていない人の中で、時間が経過して何人にイベントが起こるのかという、時間の前後関係がなければ計算できません。

このように時間の前後関係がみれる、前向き(コホート)研究に使われます。

例)喫煙歴がある人がない人と比べてこれからCOPDになる確率(リスク)を求めるなどに使用します。

オッズ比:ケースコントロール研究(症例対照研究)

ケースコントロール研究は、アウトカムである結果が起きている人を研究対象と選んで行います。

そこで、後ろ向きにみて、その結果(イベント)が起きるに至った原因をみていくわけです。ですので、時間軸が逆になっています。

そのため、イベントが起こった人から優先的に研究に入れていきますので、発症リスクは計算できません。

例)COPDの有無において、喫煙歴の有無がどれほど影響しているか?

ここで、コホート研究とケースコントロール研究についてわかりにくかったら、以下のサイトを参考にしてください。

研究デザインとは?研究デザインの「まとめと概要」

しかし、研究をおこなっていく上で、上記のコホート研究は時間もお金もかかってしまいます。

そのため、ケースコントロール研究が多く行われ、その時に使用されるオッズ比が疾患の発症に関連しているかどうかの指標に使われているわけです。

このように、ケースコントロール研究ではリスク比は使用できませんので注意が必要です。

逆に、オッズ比はケースコントロール研究以外でも用いて大丈夫です。

ただ、今回の例題のように、アウトカムの起こる確率が高い研究の場合(10%以上)、オッズ比とリスク比は食い違ってきますので、オッズ比を元にして計算した結果を「オッズ比が××倍になった」という言い方をして、「リスクが××倍になった」というようなことがないようには注意しないといけません。

EZRでの実践【分割表より】

今回は例題からEZRでリスク比とオッズ比を計算してみます。

上記では自分で計算しましたが、EZRを使用すれば簡単に間違えることなく計算できます。

もう一度例題の分割表を確認します。

これをリスク比の場合はEZRに打ち込み、オッズ比は元々のデータが必要です。

実際におこなってみましょう。

EZRでのリスク比の計算

EZRで「統計解析」→「名義変数の解析」→「2群の比率の比の信頼区間の計算」を選択します。

選択すると、以下の図のような入力画面が表示されます。

「群1」は暴露群である喫煙ありになりますので、喫煙者の総数を「総サンプル数」に入力し、「群1のイベント数」に喫煙者でCOPD発症している人数を入力します。

「群2」も暴露群の非喫煙になりますので、同様に入力します。

信頼区間は95のままで大丈夫です。

入力後に「OK」を選択すると、以下の結果が表示されます。

これで、リスク比が表示されます。

リスク比は「比率の比」として示されている、5.948になります。

(上記で計算した値と一緒ですね)

とても簡単に計算してくれます。

せっかくですので、統計学的有意差を示すP値を求めてみます。

求めるのは、喫煙がCOPDの発症に統計学的に有意差があるかということです。

EZRで「統計解析」→「名義変数の解析」→「分割表の直接入力と解析」を選択します。

以下の図のように、分割表を直接入力し、暴露(喫煙・非喫煙)のデータが列に入っているので、列を選択します。

今回は「カイ2乗検定」を選択して「OK」を押すと、以下の結果が表示されます。

P値をみると、4.08e-11とあります。

4.08e-11という数値は、4.08×(10の-11乗)という意味ですので、とても小さいP値です。

もちろんP<0.05ですので、統計学的に有意差があるとわかります。

なお、「カイ2乗」や「フィッシャーの正確検定」については、以下のサイトでも解説していますので参考にしてください。

EZRの使い方:カイ2乗(χ2)検定、フィッシャーの正確検定

EZRでのオッズ比の計算

オッズ比を計算するには、リスク比のように直接分割表を入力するのではなく、元データが必要です。

先ほどの表の元データだと以下のようになっているはずです。

このデータをEZRにインポートしてオッズ比を求めます。(インポートについては以下のサイトを参考にしてください)

EZRの使い方:医療統計実践編 データのインポート

EZRにデータセットを読み込んだ状態で、「統計解析」→「名義変数の解析」→「二値変数に対する多変量解析(ロジスティック回帰)」を選択します。

選択すると以下のような画面が表示されます。

目的変数にイベント(結果にあたる変数)、説明変数に暴露にあたいする変数を選択します。

「OK」をクリックすると、以下の結果が表示されます。

この結果の解釈ですが、

(Intercept)の横の数字が非喫煙者のオッズを示しています。

先ほど計算した「7÷44=0.159」と一致します。

「喫煙の有無」の横の数字がオッズ比になり、こちらも上記で計算した結果と同じになります。(当たり前ですが)

P値<0.05ですので、統計学的有意差もこの結果から認められます。

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まとめ

今回は研究で度々登場する「リスク」と「オッズ」についてまとめてみました。

リスクは時間軸が必要なコホート研究でしか使用できず、オッズ比はケースコントロール研究でも使用できます。

オッズ比はリスク比と混同されますが、全く違う求め方ですので、間違わないようにしないといけません。

特にオッズに関しては、様々な研究で使用されますので、論文を読むときや自分が研究するときに必要な知識です。

少しでも参考になれば幸いです。

 

EZRでは様々な統計が実践できます。

以下のサイトにまとめていますので、参考にしてください。

EZRの使い方まとめ