文献検索をしたことがありますか?
文献検索というと、とりあえず、医中誌やPubMedを思い浮かべるかもしれません。
実は文献検索には様々な方法があり、文献の質についても考えないといけません。
(私は医中誌やPubMedくらいしか知りませんでした・・・)
根拠に基づく医療(EBM)を実践するには、医療者は信頼性の高い文献を収集し、読み解く必要があります。
今回は文献の収集についてまとめてみたいと思います。
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一次資料と二次資料
文献は一次資料(一次論文)と二次資料(二次論文)に分けられます。
一次資料:原著論文(研究論文)、短報・速報、症例報告など
二次資料:総説・解説、システマティックレビューとメタ分析、診療ガイドラインなど
以下にイメージ図を添付します。
文献を引用する際にはこの一次資料を引用します。
実際の臨床現場ではガイドラインなどの二次資料をもとに、基本的な医療が行われています。
文献データベース
効率よく文献を検索するには、文献データベースの使用が不可欠です。
医学文献が検索可能なデータベースは意外に多く、以下のようなデータベースがあります。
データベース名 | 提供元 | 特徴 | 有料・無料 |
PubMed | 米国国立医学図書館 | 医学関連分野最大級のデータベース。世界中の主要な医学・生物学的関連雑誌に掲載された学術論文の文献情報を検索可能 | 無料 |
MEDLINE | 米国国立医学図書館 | PubMedの主な構成要素となっている医学文献のデータベース。日本語版あり | 有料 |
Cochrane Library | Wiley社 | 国際的な医療評価プロジェクトであるコクラン共同計画が発行するデータベース。コクラン共同計画が作成するシステマティック・レビューであるコクラン・レビューの収録データベースを中心とした、EBMに役立つデータベースの集合体。ある特定の治療が有効か、ほかの治療法に比べてどれだけ優れているか、安全かなど、治療・予防の問題解決のための最優先データベースとされている。 | 有料 |
Science Direct | Elsevier社 | 科学・技術・医学・社会科学分野の電子ジャーナルと電子書籍を収載する世界最大の全文データベース | 有料 |
J-Stage | 科学技術振興機構 | 日本国内で発行された電子ジャーナルの無料公開システム | 無料 |
Google Scholar | Google 社 | 世界中の学術雑誌、論文、書籍、記事など、学術資料の検索エンジン | 無料 |
CiNii | 国立情報学研究所 | 国内外の学術論文のデータベース | 無料 |
国立国会図書館サーチ | 国立国会図書館 | 国立国会図書館をはじめ、全国の公共図書館、公文書館、美術館や学術研究機関などが提供する資料、デジタルコンテンツを統合的に検索可能な検索エンジン | 無料 |
医中誌 | 医学中央雑誌刊行会 | 国内の医学、歯学、薬学およびその周辺分野の論文情報の検索サービス | 有料 |
メディカルオンライン | 株式会社メテオ | 国内の学会誌、雑誌に掲載された医学論文の全文を収載。検索するのは無料 | 有料 |
多くないですか?
実際に利用するのはこの一部になりますが、このように様々なデータベースから文献を検索することができます。
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エビデンスレベル・推奨グレード
診療ガイドラインなどはEBMに基づいて策定されることが望ましいとされています。
そのため、文献のエビデンスレベルを評価します。
(文献は世界中に山ほどありますので、エビデンスレベルに分けないと判断ができないのですね)
エビデンスレベルは以下のように設定されていますので、一次資料から文献を確認するときの参考にしてください。
*ガイドラインでは、このエビデンスレベルが項目ごとに示されています。
ちなみに、ガイドラインではエビデンス評価を行ったあとに、医療状況(コスト、作成する国の保険制度等)を加味して推奨グレードが以下のようん決定されます。
検索雑誌の確認:IF(インパクトファクター)とは?
一次資料の検索結果から信頼性の高い論文を絞り込む作業も重要です。
研究のデザインも重要ですが、「有名で質の高い雑誌に掲載されている」というのは1つの目安になります。
雑誌の質の指標としては、インパクトファクターに注目することが多いです。
ある雑誌に収録されている論文が、特定の期限内に平均的にどれくらい引用されたかを示す統計的な指標です。
雑誌の全般的な質を示す客観的な評価指標として利用されます。
IFが高いほどより質の高い雑誌とみなされます。
雑誌によってはその雑誌のwebページにIFを公表しているものもあります。
<2019年のインパクトファクター上位>
CA-A CANCER JOURNAL FOR CLINICIANS : 244.585
NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE : 79.26
LANCET : 53.25
など・・・聞いたことある雑誌たちですよね。
注)IFは個々の論文の質ではなく、雑誌全体の質を示すものなので、各論文の質や研究の優劣について判断することはできません。
異なる分野間のIFは比べられませんし(研究者数が少ない分野は引用回数自体が少ないですので)、肯定的な引用なのか批判的な引用なのかは計算に含まれていません。
このことから、IFを真の雑誌の価値として評価していいのかどうかは疑問視する声もあるようです。
IFや研究デザイン、新規性など、全てを考慮して論文を検索する必要があるようです。
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まとめ
- 文献には、一次資料と二次資料にわかれます。
- 引用文献は基本的には一次資料になります。
- 一次資料はPubMedなどの文献データベースを使用します。
- ガイドラインではエビデンスや推奨グレードが記載されています。
- 雑誌の質を評価する指標としてIFが用いられることが多いです。
今回は文献検索の基礎として、用語やデータベースの基本をまとめてみました。
何かを調査したいときに参考にしてもらえたら幸いです。
“文献検索の基礎:一次資料〜二次資料、エビデンスレベルについて” への1件のフィードバック