FIRMNESSの基準:リサーチクエスチョンの吟味

「FIRM2NESS」なんて用語をご存知ですか?

研究者じゃない限り、ほとんどの方は知らないのではないでしょうか?

・・・私は勉強するまでは聞いたことすらなかったです。

 

FIRM2NESSに関しては臨床を行っている限りは、ほとんど関係のない知識ですが、臨床研究を行うにあたって十分注意すべき項目になります。

知っていると研究の質は上がると思います。

慣れない用語でも内容は単純ですので、今回簡単にまとめてみたいと思います。

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FIRM2NESSの基準とは?

臨床研究を行うには、クリニカルクエスチョンから始まり、PICOやPECOで構造化したリサーチクエスチョンを設定する必要があります。

 

クリニカルクエスチョンやリサーチクエスチョンに関しては以下のサイトを参考にしてください。

クリニカルクエスチョン(CQ)とリサーチクエスチョン(RQ)

 

PICOやPECOに関しては以下のサイトを参考にしてください。

PICOとPECO??:臨床研究疑問の構造化

 

臨床的疑問から、自分なりにPI(E)COを設定してもそれが研究を行うにあたって十分であるとは限りません

PI(E)COを評価する必要があります。

 

その方法の1つが、FIRM2NESSのチェックになります。

FIRM2NESSは、以下のそれぞれの項目の頭文字を繋げただけの用語です。

Feasibility:実現可能性

Interesting:興味深い

Relevance:切実性

Measurable:測定可能

Modifiable:修正可能

Novel:新規性

Ethical:倫理的

Structural:構造化された

Specific:特異的

研究をする時のPICOやPECOを設定した場合、これらをチェックする必要があると言われています。

なんとなく用語だけでもイメージがつくかもしれませんが、具体的に説明していきます。

具体的なFIRM2NESS

Feasibility

研究したいテーマが実現可能であるか判断する項目です。

実現可能であるかにはさまざまな要因が関わります。

どのような問題が起こりうるかを考え、解決可能かどうかをチェックしていく必要があります。

例えば、測定したい項目を評価する機器が使用可能か、研究を行ううえでマンパワーは十分なのか、など考えないといけません。

研究費の確保などもこの項目に含まれます。

Interesting

研究自体が興味深いか判断する項目です。

研究テーマにあがっているくらいですので、研究者本人は興味深いと思っていると思いますが、他者へも興味深さを伝えられるように客観的に記載できる必要があります。

Relevance

Relevanceは「切実さ」という意味になります。

研究を行おうとすると、研究者自身のための研究になりがちになってしまいます。

研究のための研究ではなく、目的とする対象にとって大事な研究になり得るかをチェックする必要があります。

Measurable

研究で用いる曝露やアウトカムが測定可能であるかチェックする必要があります。

研究を行いたいものが実際に測定可能であるかどうかは非常に重要です。

対象疾患が期間中に集めることができるのか、などを確認し、実際に測定不可能と判断した場合は研究実施計画書を修正しないといけません。

また、PICOとPECOの内容が、具体性に欠けている場合、測定可能になるように修正することも含まれています。

Modifiable

曝露や介入対象となる病態がそもそも治せるものであるかという視点でチェックします。

例えば、

P:肺がん患者

E:年齢が若い

C:年齢が若くない

O:病気の進行が速い

という、PECOを例にすると、

曝露である年齢は若返らせることができませんので、Modifiableの視点では「×」がつきます。

しかし、このテーマのように、研究テーマによってはModifiableは「×」でも問題はありません。

具体的には、予後予測の要因を探索したり、回復の程度を予測する要因として年齢が関係するのであれば、臨床上の意思決定には役立つ情報になるはずです。

このように、必ずしもModifiableである必要はないということです。

Novel

新規性は研究テーマとして重要になってきます。

新規性かどうかを判断するには、網羅的に先行研究を調べる必要があります。

全く新しいテーマを研究することは難しいと思いますが、どこか先行研究と違う視点をいれて、自分のテーマに新規性を求める必要があります。

全く同じ対象、同じ評価、同じPI(E)COでは新たに研究をする意味がなくなってしまいます。

しかし、テーマが一緒でも先行研究に明らかに不備がある場合は、そこを修正して新規性を求めた研究でも価値はあります。

Ethical

倫理性も研究を行ううえで重要になってきます。

個人的な判断で倫理性を評価することはできませんので、倫理委員会に研究計画書を提出して評価してもらう必要があります。

特に介入研究では倫理性が重要視されます。

Structural/Specific

構造化と特異性(明確さ、絞りこみ)に関しては、PI(E)COがしっかり設定できていれば問題ありません。

研究をスムーズに行うためにも、構造化と特異性の視点でPI(E)COを作成する必要があります。

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まとめ

  • 研究テーマが決まり、PI(E)COが設定できても、PI(E)COを評価する必要があります。
  • PI(E)COを評価する項目としてFIRM2NESSの基準に従って評価していくと、質の高い研究テーマが作成されます。

 

研究を行うには、臨床的疑問をみつけて、PI(E)COに落とし込んで構造化して、FIRM2NESSの基準に従って質を高めていく必要があります。

始めるまでに長い過程のようですが、研究を始めてしまうとあとで取り返しのつかない自体になってしまうことがよくありますので、最初の研究計画がとても重要になります。

FIRM2NESSの基準は聞き慣れない用語かもしれませんが、実はそんなに複雑な内容ではありませんので、参考にしていただけると幸いです。