呼吸数の評価って意外にめんどくさくないですか?
患者さんを目の前に、じっくり呼吸数を数えることってなかなかしませんよね。
(少なくとも私はそうでした・・・)
しかし、フィジカルアセスメントをする上では必須な評価項目ですよね。
やっぱりそれだけ重要な評価指標なんです。
今回は、ないがしろにされそうな呼吸数についてまとめてみましたので、参考にしてみてください。
スポンサードサーチ
目次
呼吸数変化は異常出現の早期サイン
「バイタルサイン」とは、
生命兆候を数値化したものです。
血圧、脈拍(心拍数)、呼吸数、SpO2、体温などがありますよね。
おそらくラウンドしたときは、すべて測定することになっていますよね。
電子カルテではフォーマットができているかもしれません。
この質問を、救急医で有名な古川力丸先生が、セミナーで受講生に質問していました。
答えは「呼吸数」でした。(まぁ今回の流れからはこれですよね・・・)
特に呼吸数の増加に注意が必要です。
呼吸数増加は・・・
・酸塩基平衡(pH)を即座に保つための代償反応
・異常時に最も早く変化するバイタルサイン
であるからです。(急変患者さんで多い状態)
酸塩基平衡(pH)を保つための反応
人間はpH7.4近辺で保たれていて、この数値でないと正常な体の機能(ホメオスタシス)を営むことはできません。
しかし、生体は様々な影響で「酸性(pH<7.35)に傾いたり、アルカリ性(pH>7.45)」に傾いたりします。
酸性に傾くことを「アシドーシス」
アルカリ性に傾くことを「アルカローシス」
といいます。
アシドーシスとアルカローシスになってしまう原因は様々あるのですが、身体はどうにかしてpHを7.4に戻そうとして代償反応が起こります。
代償する手段が「呼吸:肺」と「代謝:腎臓」です。
この酸塩基平衡を詳しく説明すると長くなってしまうのですが、救急の現場、急変時は、身体がアシドーシスに傾いていることが多いです。
そして、アシドーシスはアルカローシスと違って致死的であり、即座に対応が必要です。
そのため、アシドーシスを是正しようとして、「呼吸」で代償しています。
厳密にいうと、体からCO2(二酸化炭素)を出す必要があります。
てっとりばやくCO2を出すには、呼吸数をあげて、分時換気量を増やすことが必要になります。
ですので、
となるのです。
異常時に最も早く変化するバイタルサイン
呼吸数の変化は、脈拍や血圧などの他のバイタルサインよりも早期に変化するといわれています。
理由としては、pHを保つためというところも含まれるかもしれませんが、それほど鋭敏に反応する指標ですので、継時的なモニタリングが必要になります。
当然、状態が悪化しすぎる前に対応できたほうが、治療結果もよくなりますし、患者さんの負担も減ります。
そのため、呼吸数は急変対応の先手を打つためにも重要な評価になるのです。
体温上昇したら、呼吸数増加する??
感染症などによる体温の上昇に伴い、脈拍数は増加するが、呼吸数は通常は増加しません。
呼吸数の増加が顕著な感染症の場合は、敗血症に注意が必要です。
・「カテコラミン」は体温上昇、心拍数上昇しますが、呼吸数には(基本的には)影響しません。
・「エンドトキシン」は体温上昇、心拍数上昇に加えて、呼吸数上昇します。
感染症後に敗血症になることは、重症化しているサインです。
このことからも、呼吸数の変化をみることはとても重要になります。
*敗血症のスクリーニング評価については、以下のサイトを参考にしてください。
呼吸数が必要な測定ツール
呼吸数はとても重要な評価ですので、様々な測定ツールの項目に使用されています。
以下に急性期対応が指標の例をあげてみました。
<qSOFA>
qSOFAは敗血症のスクリーング指標です。
以下のサイトに詳しく記載していますので、参考にしてください。
<RRS>
RRSはRapid Response Systemという、院内救急対応時の指標になります。
これも以下のサイトに詳しく記載していますので、参考にしてください。
<トリアージ法>
トリアージは病院で行われることはないと思いますが、災害現場など、まさに救急時の対応や重症度を判断しないといけない現場で使用される方法です。
そこでも、呼吸数は最も早期に確認すべきバイタルサインになっています。
スポンサードサーチ
呼吸数を正確に評価していない現状
呼吸数はとても重要な評価ですよ!と書かせてもらいましたが、実際の臨床現場ではしっかり測定されているでしょうか?
血圧や脈拍、SpO2など、機器を使用して測定するバイタルサインはしっかり測定しても、呼吸数は簡単に行える反面、だいたいになっていませんか?
(私がそうでしたので・・・)
まとめ
呼吸数はバイタルサインのなかで最も重要な指標といわれています。
急変時の状態をいち早く反映し、身体を正常に保とうとする代償反応でもあります。
さまざまな重要な測定ツールにも使われています。
現実は正確に測定されていない実状があるので、注意が必要です。
今回は、私がおろそかにしていた反省をもとに、呼吸数評価の重要性についてまとめさせていただきました。