今回はATSとACCPが共同で人工呼吸器離脱に関するガイドラインを作成したので簡潔にまとめてみます。
*ATS:The American Thoracic Society
*ACCP:The American College of Chest Physicians
このガイドラインは人工呼吸器離脱に関するよくある6つのクリニカルクエスチョンについて、最近の知見に基づき検証したものです。
ガイドラインですので、もちろん根拠に基づいていますし、良質な論文ですので参考にしてください。
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目次
An Official American Thoracic Society/American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline: Liberation from Mechanical Ventilation in Critically Ill Adults. Rehabilitation Protocols, Ventilator Liberation Protocols, and Cuff Leak Tests
【論文紹介】
Am J Respir Crit Care Med.2017 Jan 1;195(1):120-133.PMID27762595
ガイドラインの作成
ガイドラインの作成概要を抜粋します。
- ATSとACCPからパネルメンバーを選定
- 6つのクリニカルクエスチョンにグループを割り振り
- Key QuestionとOutcomeの設定
- システマティックレビュー(MEDLINE,Cochrane Library,CINAHLを用いて検索)
- メタアナリシスを実施
- GRADE approachを用いたRecommendation作成
- 投票(80%以上の賛成)
- 再構成と再投票
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6つのクリニカルクエスチョン
臨床的に人工呼吸器離脱で関連する項目が6つ作成されていました。
以下はPICOにのっとって検索式を作成され、グレードを決めています。
PICOがわからない場合は以下のサイトを参考にしてください。
1.SBTに吸気圧補助は必要か?
P:24時間以上挿管管理下の急性期入院患者
I:SBTを吸気圧補助下(PS5-8mmHg)で施行
C:吸気圧補助なし(Tピース)で施行
O:人工呼吸器管理期間、抜管成功、SBT成功、ICU滞在期間、短期死亡率(60日以下)、長期死亡率
4論文のRCTを採用
【結論】
推奨:SBTは、吸気圧補助なし(Tピース or CPAP)よりも、吸気圧補助5-8cmH2Oで施行すべき。
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Moderate-quality
2.鎮静を最小限にするように管理すべきか?
P:24時間以上挿管管理下の急性期入院患者
I:鎮静を最小にするようにプロトコル管理する
C:鎮静を最小にするようにプロトコル管理しない
O:人工呼吸器管理期間、抜管成功、SBT成功、ICU滞在期間、短期死亡率(60日以下)、長期死亡率
6論文が採用され、メタアナリシスを実施
【結論】
推奨:ICU滞在期間の短縮と人工呼吸器装着期間の短縮が期待できることから、鎮静を最小限にするプロトコル管理をすべき
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Low-quality
3.再挿管リスクの高い患者では、抜管後に(予防的に)NIVを使用すべきか?
P:24時間以上挿管管理下でSBT成功しているが、抜管に失敗するリスクの高い患者
I:抜管後の予防的NIV使用する
C:従来通りの酸素療法を行う
O:人工呼吸器管理期間、抜管成功、SBT成功、ICU滞在期間、短期死亡率(60日以下)、長期死亡率
5論文のRCTを採用
【結論】
推奨:SBT成功しているが、抜管に失敗するリスクの高い患者は、予防的にNIVを使用すべき
(NIVによる鼻梁や潰瘍形成は懸念されるが、抜管成功率向上とICU滞在期間の短縮効果が期待できることから)
・Recommendation:Strong
・Evidence:Moderate-quality
4.早期離床に向けたリハビリテーションは推奨されるか?
P:24時間以上挿管管理されている急性期入院患者
I:早期離床を目指したリハビリテーションプロトコルを用いる
C:早期離床を目指しプロトコルを用いない通常ケアを行う
O:死亡率、ICU滞在期間、ICU退室時の歩行可能、退院時の歩行可能、6分間歩行距離、人工呼吸装着期間、致死的イベント、不整脈出現
3つのシステマティックレビューを採用
【結論】
推奨:早期離床を目指したリハビリテーションプロトコロルを用いるべき
(人工呼吸器装着期間の短縮、退院時の歩行可能性向上の利点がある)
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Low-quality
5.人工呼吸離脱プロトコルを用いた管理をすべきか?
P:24時間以上挿管管理されている急性期入院患者
I:人工呼吸離脱プロトコルを用いる
C:人工呼吸離脱プロトコルを用いない
O:致死率、院内死亡率、人工呼吸器装着期間、再挿管率、ICU滞在期間、ICU死亡率
17の論文を採用(15論文はRST)
【結論】
推奨:人工呼吸器離脱プロトコルを用いるべき
(人工呼吸器装着期間、ICU滞在期間を短縮できる)
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Low-quality
6a.抜管後の気道狭窄リスクが高い患者ではカフリークテストをすべきか?
P:抜管基準を満たしたが、抜管後の気道狭窄リスクの高い人工呼吸器管理中の成人患者
I:カフリークテストを施行する
C:カフリークテストを施行しない
O:再挿管率、抜管後のストライダー、抜管の遅延
11論文を採用(観察研究)
【結論】
推奨:抜管基準を満たしたが、抜管後の気道狭窄リスクが高い患者では、カフリークテストを施行すべき
(再挿管後の呼吸器管理期間を12日間以上と想定すれば、カフリークテスト施行するメリットがあるといえる)
*高リスクとは:挿管時の外傷があった、6日間以上の挿管、太いサイズの挿管チューブ、再挿管後など
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Very Low-quality
6b.カフリークテストに失敗した場合にステロイド投与をすべきか?
P:カフリークテストに失敗したが、他の抜管基準を満たしている成人患者
I:抜管の4時間前までにステロイド全身投与を行う
C:プラセボ投与
0:再挿管率、抜管後のストライダー、抜管の遅延
3つのRST論文を採用
【結論】
推奨:カフリークテストに失敗したが、他の抜管基準は満たしている成人患者では、抜管の4時間前までにステロイド全身投与を行うべき。カフリークテストの再施行は不要。
(ステロイド全身投与で、再挿管率が減少、ストライダーが減少する)
・Recommendation:Conditional
・Evidence:Moderate-quality
まとめ
今回のガイドラインは全て臨床に役立つクリニカルクエスチョンであったのでまとめてみました。
ほとんどが予想通りの結論でしたが、カフリークテストを失敗したときのステロイド全身投与は意外とエビデンスも高かったので少し驚きました。
ガイドラインであり、理解しやすい内容ですので、興味がある方は是非以下の原著論文を参考にしてください。
Am J Respir Crit Care Med.2017 Jan 1;195(1):120-133.PMID27762595