今回はICUでの早期強化型のリハビリについての論文紹介をしたいと思います。
早期リハビリテーションに加えて、「ベッド上でのサイクルエルゴメータ」と「電気治療」を組み合わせた効果を判定した初めての論文です。
しかもインパクトファクターのとっても高いJAMAに掲載されている論文になりますので、理解しておいて損はない論文です。
ICUでの早期リハビリテーションは2010年以降、当たり前のように進んでいき、もはや標準治療になってきています。
いわゆる「早期離床」が重要なのですが、日本では標準的なガイドラインもなく、施設によって介入内容にばらつきがあります。
そんななか、2017年に日本集中治療医学会から早期リハビリテーションの標準化を目指すためにエキスパートコンセンサスがまとめられて、出版されました。
以下のように定価も2000円以下とかなり安くてとてもオススメの本になります。
このような早期リハビリテーションを推奨する背景のなか、海外ではさらなる積極的リハビリテーションの効果を判定する報告が増えてきています。
最近は比較的ネガティブな論文が多いのですが、今回も残念ながら「超」積極的リハビリを後押しする結果ではありませんでした。
簡単にまとめますので、参考にしてください。
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目次
Effect of In-Bed Leg Cycling and Electrical Stimulation of the Quadriceps on Global MuscleStrength in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial.
【論文紹介】
Fossat G, et al.JAMA. 2018 Jul 24;320(4),368-378. PMID:30043066
【方法:PICO】
単施設でのRCT(2014年7月〜2016年6月)
P:ICUで48時間以上入室した成人重症患者
I:エルゴメータ+大腿四頭筋への電気療法(通常の早期リハビリテーションに加えて)
C:通常の早期リハビリテーション
O:ICU退室時の筋力(MRCスコア)など (6ヶ月後までフォローアップ)
*エルゴメータ:1日15分間(鎮静患者は受動的にも実施)
*電気療法:1日50分間、大腿四頭筋
PICOについてわからない場合は以下のサイトを参考にしてください。
【結果】
1480人の登録者
最終的に 120人 vs 125人 での研究
患者のベースライン:年齢、性別、重症度、呼吸器管理など全て両郡有意差なく同等
疾患:呼吸不全、敗血症が多い
有害事象:2群間で有意差なし
介入効果
- 離床の進行具合は両郡有意差なし
- ICU退室時のMRCスコアは2群間で有意差なし
- ADLやせん妄の発症、人工呼吸器装着期間、大腿直筋厚、ICU・6ヶ月後死亡率、6ヶ月後の身体機能、全てで2群間に有意差なし
結論
ICUでの早期サイクルエルゴメータ+電気療法の効果は証明できなかった
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まとめ:感想
サイクルエルゴメータ単独、電気療法単独の効果を示した論文は散見するが、まだはっきり効果が示されているわけではありませんでした。
そんななか、RCTで、さらにJAMAに掲載された論文であったため、効果が示せなかったことの影響は大きいと思われます。
かなり早期の積極的介入であり、時期としては「筋肉異化亢進時期」の電気療法やサイクルエルゴであるため、その時期の重症患者では筋力回復は見込みにくいのかもしれませんね。
サイクルエルゴメータと電気療法の両方とも実践現場では有効性は感じていますが、今回の論文のような超早期ではありませんし、患者選定は必要だとも思います。
今後、効果が示せる時期、患者選定が確率してくれば有効な手段であると思いますが、ルーチンで行う治療ではなく、まずは標準的な早期リハビリテーションで十分であるとのことでしょうね。
当施設でも、現時点ではサイクルエルゴや電気療法は超早期には行なっていないので、まだ様子をみていきたいと思います。(しっかり標準治療を行うことが重要だと思います)
効果を示せた論文ではありませんが、良質な論文であり勉強になりますので、詳しく確認したい方は、是非以下の原著論文をご確認ください。
Fossat G, et al.JAMA. 2018 Jul 24;320(4) PMID:368-378.30113371