「バイアス」 とは?:研究で生じるバイアスの種類【まとめ】

研究を行おうとすると「バイアス」という用語を聞くことになると思います。

バイアス=「データの偏り」を意味しますが、バイアスには様々な種類があると言われています。

 

バイアスのない研究はありませんが、極力バイアスを取り除かないといけません

そのためにはある程度は「バイアス」についての理解が必要です。

 

また、論文を読む能力でも、バイアスの知識が重要になってきます。

読んでいる論文がどれほどのバイアスがかかっているかを把握できると、論文の質を評価することもできます。

つまり、論文の内容が自分の臨床にどれほど落とし込めるかも判断できるようになります。

 

今回はそんな「バイアス」について簡単にまとめてみました。

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バイアスとは

明らかにしたい真の結果を誤らせる要因をバイアスといい、日本語では「偏り」「誤差」と表現されます。

 

研究を行う以上、バイアスのない研究はありませんし、完全にバイアルを取り除くことができないのが実情です。

(だから完璧な論文はなく、論文の”批判的吟味”などという論文の読み方があるのです)

 

しかし、バイアスが大きすぎると結果の妥当性がなくなってしまうため、

いかにバイアスの程度を小さくするかが研究を行う上で重要になります。

また、自分の行った研究の限界を理解して解釈する必要があります。

 

論文や学会発表の考察で、limitation(限界)について記載・考察する必要がありますが、これは自分の研究のバイアスを理解して言及します。

 

質の高い研究にするためには、

バイアスを極力取り除き、生じてしまうバイアスを理解してlimitationを把握し、研究の結果を解釈することが重要になります。

バイアスの種類と対応策

バイアスには様々な種類があり、研究デザイン、データ収集、分析、レビュー、出版など、研究の始まりから終わりまで、様々な段階で起こります。

以下に主なバイアスの種類をまとめました。

選択バイアス

母集団から抽出された標本を介入群とコントロール群に割り付ける際に生じるバイアスです。

理想的には、比較した両群の背景因子に差がないことが重要です。

背景因子に差があれば、正しい効果判定をすることができなくなります。

例えば、「研究に協力してくれそうな人を介入群」と「研究に非協力的な人をコントロール群」とした場合、両群間には明らかに特性の差があり、その差がアウトカムに影響します。

このような選択バイアスは「ランダム割付け(random allocation)」によって防ぐことができます。

ランダム割付け

母集団から標本を無作為に抽出する無作為抽出(random sampling)ではなく、選択基準をもとに標本を無作為に介入群とコントロール群に割付けるランダム割付け(randam allocation)を指します。

これにより、年齢や性別などアウトカムと介入との関連に交絡する可能性のある要因を、その測定の有無にかかわらず、ベースライン時点で両郡間を均等化することが期待されます。

しかし、サンプルサイズが少ないと偶然誤差にて両郡間に差が生じる可能性もあります。。

 

しかし、完全に両群の背景因子を揃えるわけではなく、「治療継続群」と「治療脱落群」の2群で明らかな特性の差があると思われても、その差がなんなのか証明するための比較試験は行われることがあります。

 

サンプルサイズの少ない研究では、ほとんど選択バイアスがかかっていることは理解しておく必要があります。

情報バイアス/評価バイアス

評価者が評価する際に主観的な要因が入ることで生じるバイアスです。

評価者が治療内容を事前に知っていると、よりよい結果を得たいと思うあまり、期待する結果に「強調しやすく」なり、それ以外の結果には「見逃しやすい」という傾向になります。

また、患者自身がどちらの群に属しているかわかっていると、それが患者の判断、行動、心理などに影響を与え、その結果、アウトカムにも影響を恐れがあります。

このバイアスは「盲検化(blinding)」によって防ぐことができます。

盲検化

さまざまなアウトカムの評価やデータ解析に対し、主観に基づくバイアスを取り除くために行われる方法です。

患者、治療者、評価者、データ解析者が治療方法の割付けについて知らされていないようにします。

「リハビリ介入後の心理的変化」などを、リハビリ提供者が直接評価を行うと、患者さんは気を使って効果があったような表現をしてしまうことが多いです。

このようなことも、評価バイアスと言われますので、第三者が評価を行うなどの対応が必要です。

分析バイアス

データ解析者の勝手な思い込みや判断で特定の患者をデータ解析から除外したり、脱落者を除外することによって生じるバイアスです。

ランダム割付けでの研究では、このバイアスを「intention to treat(ITT)解析」によって防ぐことができます。

ITT解析:治療企図解析

ランダム割付けを行う介入研究において、研究を始める前に決定した対照群と介入群の割付けを終了時にも解析する方法です。

あくまでランダム割付けを重くみて、研究途中で脱落してしまって治療を続けられなかったとしても含めて解析することになります。

交絡バイアス

原因と結果を検証する際に、その背後に隠れて存在する交絡因子が存在することを交絡バイアスといいます。

交絡因子を少なくするには、ランダム化比較試験(RCT)、マッチング、多変量解析、先ほどのITT解析などが有効です。

交絡因子

原因変数と結果変数の因果関係に対して、間接的に影響する変数のことです。

例えば、下肢筋力(原因変数)と運動耐用能(結果変数)の関係をみるという研究をするとき、若ければ運動耐用能は高いでしょうし、高齢であればその逆になります。

この時「年齢」が下肢筋力(原因変数)と関連し、運動耐用能(結果変数)と因果関係をもつと考えられるので交絡因子となります。

公表バイアス

結果の良かった研究しか、論文として発表(引用)されないというバイアスです。

臨床試験の登録、公開(レジスター制度)によって防ぐことができます。

研究の背景や方法は公開されていても結果が記載されていない論文はこれにあたります。

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まとめ

  • バイアスとは、明らかにしたい真の結果を誤らせる要因のことをいいます。
  • 研究にはバイアスがつきものですが、可能な限りバイアスを取り除き、バイアスに対して結果を解釈する必要があります。
  • バイアスには様々な種類があり、それぞれバイアスを取り除く方法があります。

 

バイアスのない研究はありません。

しかしバイアスを理解すると結果の解釈が変わるだけでなく、なるべく取り除く方法も行えますし、論文を読む時の理解度も変わってきます。

バイアスを詳しく理解しようとすると奥が深いのですが、今回は簡単にわかる範囲でまとめてみました。