今回は臨床研究を実践していくうえで、理解しておきたい知識である「級内相関係数:ICC」について紹介します。
時々、論文を読んでいると、研究で行った検査がどれほど適正なものであったが証明するために使用されていたりします。
「級内相関係数:ICC」を理解しておくと、論文を読むときの理解が深まりますし、自分が評価した検査の信頼性を示したい場合の手段に使用できます。
あまり聞きなれないかもしれませんが、簡単にまとめてみました。
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検者間信頼性と検者内信頼性
研究を行っていくときに、まだ確率されていない評価方法の有用性を示したいとします。
例えば、「握力」を「寝ながら測る方法」が座って測る一般的な方法よりベッドサイドで測定しやすいので使用したいとします。
その時に、当たり前のように「寝ながら測る方法」を自分の方法で使用すると問題がでてしまいます。
つまり、同じ人にもう一度測定を試したら同じような結果が得られるか、という性質です。
検査結果を研究に使用するときはこの信頼性(再現性)が証明されていることが重要です。
(一般的な検査はわざわざこの信頼性を求めることはありませんが)
同一の対象に同じ検者が繰り返し測定したときの信頼性を検者内信頼性といい、異なる検者が測定したときの信頼性を検者間信頼性といいます。
級内相関係数(ICC)とは?
この信頼性(再現性)について、測定の検者内または検者間信頼性を示す指標の1つとして、級内相関係数(ICC:intraclass correlation coefficients)が利用されます。
ICCは、基本的にはパラメトリックなデータで、平均や分散分析が有効な情報となりえる比率尺度、感覚尺度のデータに適用されます。
*順序尺度のデータも、パラメトリックに従う母集団からのデータで、段階数の多いデータであれば適用されますが、極端に判定されることがあるので注意が必要だそうです。
ICCを示している論文があれば、検査の信頼性を伝えたがっていると理解できますね。
また、自分が研究する場合は、このICCを示す必要があるかどうかは考えないといけないかもしれません。
信頼性の検定で、順序尺度または名義尺度のデータに適用されるノンパラメトリックな手法では、測定の一致度の指標としてκ(カッパ)係数やKendallの一致係数(W係数)が利用されます。
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級内相関係数(ICC)の分類と判断基準
ICCの判断の仕方についてまとめていきます
ICCの分類
ICCには、以下の図のように6つのモデルに分類されています。
Case1〜3の大分類はなんとなく意味がわかると思いますが、下位の6分類は意味不明ですよね・・・
さらに細かく解説していきます。
検者内・検者間信頼性がどれくらいあるかを知るために使用します。(いわゆる信頼性・再現性の普通のイメージですね)
ICC(1,1):1人の検者で2回以上繰り返し測定した値の検者内信頼性を把握する場合
ICC(2,1):2人以上の検者それぞれが1回ずつ測定した値の検者間信頼性(絶対一致)を把握する場合
ICC(3,1):検者間信頼性を知りたいが特定の検者の検者間信頼性(相対一致)を把握したい場合
これらは比較的わかりやすいですね。
例として、検者A,B,Cの3名で、患者5名の握力を測定したとします。検者3人の一貫性(検者間信頼性)はどれくらいであるかを、ICC(2,1)で求めることになります。
複数回測定した平均値を使用したときの検者内・検者間神羅性がどのくらいあるかを知るために使用します。
別の例えでは、4人の被験者を対象にして、それぞれ3回握力を測定した握力値の信頼性について知りたいとします。
これは検者内信頼性であり、ICC(1,1)、ICC(1,k)で求めることができます。
まずICC(1,1)で信頼性を推定します。
次に1人の検者が被験者n人をk回測定した平均のデータにどのくらいの信頼性となっているかを知りたい場合にICC(1,k)で求めます。
ICCの判定基準
ICC値の解釈にはいくつか見解があるうようですが、下の基準表を参考にしてください。
一般的に0.7程度以上のときに、高い信頼性があると判定されます。
まとめ
今回は評価結果の信頼性(再現性)の指標として級内相関係数(ICC)についてまとめました。
論文を読んでいると測定していることも多いですので、今回の内容を理解しておくと研究結果の解釈が行いやすいと思います。
また、自分で研究する際にもICCの測定が必要かどうか考えることも重要かと思います。
少しでも参考になれば幸いです。