【EZRの使い方】感度・特異度・検査後有病率?

「感度」・「特異度」って聞いたことありますか?

医療の現場に関わっていると勉強会などでもよく耳にすると思います。

検査の結果を考えるときに使われる用語ですよね。

しかし、なんとなくわかっている感じになっていて、誤解していたり、間違って理解している方も多いのが「感度」と「特異度」の考え方なんです。(私は間違っていました)

そこには「検査後有病率」などが関わっているからなのですが・・・

今回は簡単に理解できるようにまとめてみました。

実際にEZRを使用して、「感度」「特異度」「検査後有病率」も求めていきたいと思います。

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感度

感度

実際に疾患があるときに、正しく陽性がでる確率

なんとなくわかるかもしれませんが、より理解しやすいように例を用いてみます。

Aという病気があるとします。Aの検査の精度について研究を行いました。この研究では「病気Aを持つ人」100名と、「病気Aでない人」100名に対して行い、結果は以下のようになります。

この例題から「感度」について考えると、見るべき数値は以下の場所です。

実際に病気がある人で検査が陽性であったのは60人、検査が陰性であったのは20人でした。よって、この検査法では「病気を持つ人を60%の確率で検出できる」という結果になります。

この確率が「感度」になります。

特異度

では特異度とは、

特異度

実際に疾患がないときに、正しく陰性がでる確率

これを先ほどの例にあてはめてみると・・見るべき数値は以下になります。

実際に病気がない人で検査が陽性でになってしまったのは20人、検査が陰性であったのは80人でした。よって、この検査法では「病気をない人を正しく陰性と判断できたのは80%であった」という結果になります。

この確率が「特異度」となります。

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偽陽性と偽陰性

「感度」と「特異度」が100%になることはまずありません。検査をしたら「実際は病気Aではないのに検査が陽性になった」ということがあります。

このように「実際には病気Aではないのに検査が陽性になる」確率のことを偽陽性といいます。

今回の例では、以下のようになり、病気Aではないのに検査が陽性となった20人がいて、偽陽性は10%となります。

*偽陽性は(1-特異度)でも表すことができます。(1-0.8=0.2)

同様の考えで、偽陰性は以下のようになり、

病気Aなのに検査が陰性になった40人がいて、偽陰性は40%となります。

*偽陰性は(1-感度)で計算できます。(1-0.6=0.4)

検査後有病率

実際の検査で知りたいこと

これまでの「感度」と「特異度」の例題ではなんとなくわかりやすいかと思います。

しかし、実際の臨床でこの知識だけではいけない理由があります(私はここからが理解不足でした)

検査を受ける側(患者さん)の気持ちになってみましょう。

そもそもこれまでの「感度」や「特異度」は前提として、「実際に疾患があるかすでにわかっている状態」での確率のことです。

そんな状態が実際の臨床ではありませんよね。

「疾患になっているかわからない状態」で検査して、診断してほしいわけですよね。

この場合、先ほどのような感度60%の検査法で「陽性」がでたからといって、実際に60%の確率で疾患になっているわけではありません。

これを「検査後有病率」といいます。

「???」ってなりますよね。わかりやすく次に解説しますね。

検査後有病率とは

もう一度確認しますが、臨床場面で患者さんが知りたいのは、「検査で陽性が出たとき、本当にその病気にかかっている確率」です。つまり・・・

検査後有病率とは?

検査結果をふまえたうえで、本当に病気である確率

*この確率は、感度・特異度のみでは計算できません。「検査を受ける前の病気の確率が必要になります。」

例えば、日本人がHIVである確率は?となると、実際にHIVになった人の数を日本の対象年齢の人口で割ると出ますので、0.0124%と計算できます。(なりやすい行為をした場合はもちろん確率は上がりますが、それは後回しにします)
この確率を「検査前有病率」といいます。

これを把握することで、検査後有病率が計算できます。

次に検査後有病率の計算について説明します。

検査後有病率の計算

検査後有病率の計算式は以下のような公式があります。

ただ、ここではこんな公式は暗記しなくても、図で理解したほうがいいです。(これじゃわからないですよね)

 

例えば、これまでの例の続きで、病気Aの検査前有病率は1%であるとします。

病気Aに対する検査は感度60%、特異度80%であるとします。

わかりやすいように、仮に1万人をもとに、以下の図のように考えていきます。

検査Aの感度・特異度だけでなく検査前有病率がわかるとこのような計算が行えます。

あとは先ほどの検査後有病率をこの図から計算すると・・・

検査で陽性(60人+1,980人)がでて、このうち本当に病気Aにの人は60人ですので、

検査後有病率=60÷(60+1,980)=0.029(29%)

ということになります。

 

ですので、実際の臨床で感度60%の検査で「陽性」が出たとして、実際に病衣にかかっている可能性は29%ということになります。

検査を受けた患者さんに

「検査が陽性なので(感度60%の検査だから)、60%で病気Aが発症しています」

といってしまうのと、

「検査後有病率と検査の感度を考えると。29%で病気Aが発症しています」

では大きな違いがあることがわかりますよね。

注意

検査前発症率は、日本人の平均をみればいいわけではなく、その患者さんの生活習慣など発症リスクを考えないといけません。

例えば、日本人のHIVの検査前有病率は0.0124%ですが、もちろん危険行為をおこなっていた患者さんは検査前有病率が全く違いますので、検査後有病率も変わってきます。

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EZRでの実践

最後に実際にEZRで計算してみます。

ここではエクセルなどでのデータベースの作成は必要なく、EZRに直接入力します。

「統計解析」→「検査の正確度の評価」→「定性検査の診断への正確度の評価」を選択します。

次に、先ほどの例をもとに以下の表に入力していきます。

「OK」を押すと、簡単に結果が表示されます。

用語が多いので説明すると、

検査の陽性率:検査を行った人全員での陽性率

真の有病率(=検査前有病率):疾患をもっている割合

感度:疾患をもっている人の検査陽性の割合

特異度:疾患をもっていない人の検査陰性の割合

陽性的中率(=検査後有病率):陽性が出た人の中で疾患ありの割合

陰性的中率:陰性が出た人の中で疾患なしの割合

診断精度:(陽性で疾患)と(陰性で疾患なし)の割合

陽性尤度比:感度÷(1ー特異度)

陰性尤度比:(1ー感度)÷特異度

このようにEZRを利用すると、臨床で必要な検査後有病率(陽性的中率)なども簡単に出せます。(データがあればですが)

まとめ

今回は「感度」「特異度」から始まり、理解できていない「検査後有病率」まで簡単にまとめてみました。

実際の臨床では「検査後有病率」をわからずに、「感度」だけで検査結果を患者さんに伝えると大きな間違いを伝えてしまい、無駄に心配させてしまうかもしれません。

ここまで理解できていると安心ですよね。

EZRにもここまでの機能がついているので、是非活用してください。

少しでも参考になれば幸いです。

 

EZRの使い方は以下のサイトにまとめてあるので興味があれば参考にしてください。

EZRの使い方まとめ