【 COVID-19論文】2つの異なる病態と対抗する呼吸器管理

(2020年5月1日)

2020年5月1日現在、COVID-19(コロナウイルス)による世界的な影響は終息せず、日本でも緊急事態宣言が発令されています。

医療崩壊が懸念されるなど、医療現場での緊張がさらに増している印象です。

そんななか、COVID-19に対する医療方針として、成人COVID-19症例に対するガイドラインが発表され、先日以下のサイトでご紹介させていただきました。

【COVID-19:論文・ガイドライン】SSS COVID-19

今回はARDSの「Baby lung」を提唱したARDSの第一人者でもある、高名なGattinoni先生が発表したCOVID-19の病態に関する論文を紹介したいと思います。

COVID-19の病態がARDSに類似しているとわかっている反面、まったく違う病態を示す場合(時期)があると報告し、病態解明や呼吸器管理にも重要な論文となっています。

ガイドラインではありませんが、高名な先生の重要論文と思われたのでご紹介させていただきます。

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COVID-19 pneumonia: different respiratory treatments for different phenotypes?

Gattinoni先生が報告しているCOVID-19の病態に関する論文です。

公開が2020年4月14日ですので、即座に研究して論文にしてくださるあたりが流石ですね。

もちろん今後の研究が進み、さらにわかってくること、もしかしたら今回の報告で間違っていることが判明するかもしれませんが、現在の医師たちの見解とも相違はないようで、信用できる先生ですので、一読する価値はある論文であると思います。

原著論文がOpen Accessで読むことができるので、まずは原文をみてください。(以下のリンクからPDFで論文をダウンロードできます)

COVID-19 pneumonia: different respiratory treatments for different phenotypes?

緊急事態ですので、Open Accessで誰でもみられる様にしているんだと思います。

異なる2つの病態と呼吸器管理

簡単に論文の概要を説明したいと思います。

Gattinoni先生はCOVID-19がARDSの定義に該当することが多いとしながらも、全く別の要因で重度の低酸素血症を示している病態があることから、2つの「Phenotype」に分類して報告しています。

2つのPhenotype

Phenotype L

Phenotype H

この「Phenotype L」の病態から、病気の進行により「Phyenotype H」に移行するのではないかとも報告しています。

簡単にPhenotype毎の特徴をまとめてみます。

Phenotype  L(Low)

・Low Elastance:肺が縮まりやすい(=肺が広がりやすい)状態です

・Low V/Q:換気血流比が低い(=血流があるところに換気がされていない)

・Low recruitability:リクルートメント手技をしても効果が低い(圧をかけても効果が低い)

・Limited “PEEP”response:PEEP効果に限界がある(圧で肺を広げても血流がいっていないため効果がない、肺が広がりすぎるだけ)

このようなことから

Phenotype Lは

局所散発な肺障害

低酸素血症の原因は、肺微小血管血栓による肺血流異常からくる

という、病態が考えられるようです。

つまり、ARDSではないとう状態です。(PEEPは効きません)

人工呼吸器管理では・・・

仮に、気管挿管に至るほどの呼吸不全になってしまったとしても、このようなフェイズの場合、肺が膨らみやすい(TV8ml/kgでも気道内圧が15cmH2O以下となる)場合は、TVを8ml/kgをキープする

*TVを6ml/kgなどの肺保護戦略では、TVを下げることで呼吸努力で陰圧生肺水腫を起こしてしまうため

最初に腹臥位療法をトライすることも示しています。

このようにPhenotype Lに該当しそうな時期は、ARDSと同様の管理は逆効果の可能性があるそうです。

Phenotype  H(High)

・High Lung Elastance:肺が縮まりづらい(=肺が広がりにくい)状態

・Higher Recruitability:リクルートメント手技の効果が高い(圧をかけると効果がある)

・High R→L shunt :右左シャントが多い

・Higher “PEEP response”:PEEPが効果的→肺胞が膨らむ

このようなことから

Phenotype Hは

びまん性の肺障害

肺水腫で説明のつくARDS様の状態

という、病態が考えられるようです。

人工呼吸器管理では・・・

仮に、気管挿管に至るほどの呼吸不全になってしまったとしても、このようなフェイズの場合、肺が膨らみにくい(TV8ml/kgでは気道内圧が15cmH2O以上となる)場合は、TVを6ml/kgに下げるする=ARDSのような肺保護換気

腹臥位療法をも効果がある

このようにPhenotype Hの場合は、ARDS様の管理が適しているといえるようです。

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まとめ

今回はいち早くCOVID-19の病態を、Gattinoni先生が論文化していたためご紹介させていただきました。

もちろん、これから研究が進み、改定されていくとことがあるかもしれませんが、現場で働く高名な先生で、今の医療現場の印象ともずれていないので、現時点では参考になるのではないかと思います。

なんでもARDS様にすればいいわけではないという視点は重要(管理と判断が難しいですが)ですね。

原文をご覧になっていない方は、以下のリンクからOpen Accessで誰でもPDFを手に入れることができますので、是非確認してみてください。

COVID-19 pneumonia: different respiratory treatments for different phenotypes?

まだまだわからないことが多く、現場では感染拡大が最も大変な時期ですが、コメディカルの方にも病態理解は重要ですので、少しでも参考になれば幸いです。