今回は敗血症ショック患者に対して、治療開始までの時間が如何に重要かという論文です。
もちろん治療開始まで早いほうがいいと思いますが、しっかりと死亡率として証明して、JAMAにも掲載されている論文ですのでまとめてみました。
敗血症の初期治療についての基礎知識を踏まえてますので参考にしていただけたら幸いです。
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敗血症の初期治療
敗血症の定義はSepsis-3から変更になり
「感染に対し、過剰な宿主反応により引き起こされる生命を脅かす臓器障害」
とされています。
そして、敗血症の診断基準は、
・ICU:SOFAスコア2点以上の増加
・ICU以外(一般病棟や外来など):qSOFAを2項目以上満たす(呼吸数≧22、収縮期血圧≦100、意識レベル変容)
となっています。
詳しくは以下のサイトを参考にしてください。
敗血症と認識したら、スピーディーな早期治療が求められます。
敗血症と認識してから3時間と6時間以内に達成すべき項目が記載されています。
- 乳酸値を測定
- 抗菌薬投与前に血液培養採取
- 広域抗菌薬の投与
- 低血圧や乳酸値≧4mmol/L(=36mg/dL)に対して30ml/hg晶質液を投与
- 初期輸液不応性の低血圧に対し、平均血圧≧65mmHgを維持するように昇圧薬を投与
- 初期輸液を行っても低血圧(平均血圧<65mmHg)が遷延する場合や、治療初期の乳酸値≧4mmol/L(=36mg/dL)であった時はvolume statusや組織還流を再評価【例)CVP評価、ScvO2測定、エコーによる心血管系の評価、下肢挙上や輸液チャレンジによる輸液反応性評価】
- 最初に測定した乳酸値が上昇している場合には、再測定を行う
これらの治療指標をさらに時間で効果判定した論文が今回の論文です。
Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis
【論文紹介】
Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis
N Engl J Med.2017 Jun 8;376(23):2235-2244.PMID28528569
P:救急に来院した重症敗血症および敗血症ショックの患者
E:3時間バンドルを完遂するまでの時間
C:比べる対象はなし
O:院内死亡率
研究デザイン:多施設共同、後ろ向きコホート研究
2014年4月〜2016年6月
ニューヨーク州のデータベースにある185病院のうち、149病院の救急外来患者
【結果】
111816名をスクリーニング
最終的に49331名を対象
・3時間バンドル完遂までの時間:1.3時間(0.65-2.35)
・抗菌薬投与までの時間:0.95時間(0.35-1.95)
・最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間:2.56時間(1.33-4.2)
・3時間バンドルの完遂に時間がかかるほど死亡率は増加する。
(完遂が1時間遅れるごとに4%死亡率が増加する)
・抗菌薬投与までに時間がかかるほど死亡率は増加する。
(抗菌薬投与が1時間遅れるごとに4%死亡率が増加する)
・最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間と院内死亡率には、関連は認めない。
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結論
3時間バンドルを完了するのに時間がかかることと、広域抗菌薬投与に時間がかかることは、院内死亡率上昇に関連がある
まとめ・感想
やはりより早期に治療開始したほうが治療効果が高いことがわかる論文になります。
同時により早期に診断をうけないといけません。
在宅でも、施設でも、一般病棟でも看護師が敗血症の第一発見者になり得ることが十分にあります。
疑わしい場合はより早期に診察をしてもらうように判断することが重要であると再認識できました。
より早く抗菌薬を投与すると、病原体の量を減らし、宿主の反応を変え、臓器障害の発生が減少する可能性があります。
医師だけでなく、看護師にも重要な論文であると思いまとめました。
興味がある方は、以下の原著論文を確認してください。
Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis
N Engl J Med.2017 Jun 8;376(23):2235-2244.PMID28528569