ARDS患者の呼吸器管理は低量換気による肺保護戦略が一般的になっていますね。
低量換気:Low tidal ventilation(LTV)は人工呼吸器の一回換気量を「6ml/kg」程度に設定することです。
今回の中等量とは、だいたい「10ml/kg」となります。
換気モードに従量式か従圧式にするかは長年議論されていますが、一回換気量の目安は様々な論文でも報告されています。
考えられる低量換気のメリット、デメリットを簡単に整理してみます。
<メリット>
- 肺の過剰伸展の回避→肺保護/VALI予防
- 過大サポートの回避→横隔膜筋萎縮の予防
<デメリット>
- 肺クリアランス低下部位への換気不足→無気肺形成の可能性
- 過少サポート→呼吸筋疲労の上昇、疲弊、鎮静剤の増量
以上のことを踏まえて、今回は非ARDS患者への研究になります。
IFが高く、影響力の強いJAMAから発表された論文ですのでまとめてみました。
スポンサードサーチ
目次
Effect of a Low vs Intermediate Tidal Volume Strategy on Ventilator-Free Days in Intensive Care Unit Patients Without ARDS: A Randomized Clinical Trial.
【論文紹介】
Simonis FD, Serpa Neto A, et al. JAMA. 2018 Nov 13;320(18) PMID:30357256
【方法:PICO】
多施設でのRCT(2014年9月〜2017年8月)
P:非ARDS肺の人工呼吸器患者(ICU管理)
I:Low tidal volume(4-6ml/kg)×予測体重
C:Intermediate tidal volume(8-10ml/kg)×予測体重
O:28日人工呼吸器 free days
PICOに関してわからない場合は以下のサイトを参考にしてください。
【結果】
スクリーニング:3695人
最終的に 475人(4-6ml/kg群) vs 480人(8-10ml/kg群)
年齢中央値:68 vs 67と両群有意差なし
両群ともに非術後患者が8割以上、ICU外での挿管が5割以上
挿管理由に両郡とも蘇生後が多い(23.1% vs 24.8%)
呼吸器のモードはPCVが多い(49.5% vs 49.4%)
プラトー圧は18 vs 20cmH2OとPplat<25cmH2Oは守られていた
主要評価項目結果
- 28日目Ventilator free daysには有意差なし:中央値21 vs 21日
- 離脱までの時間も有意差なし:中央値4.4 vs 4.3日
副次評価項目結果
- 平均ICU滞在日数(9.6 vs 9.2日)、平均病院滞在日数(20.4 vs 21.0日)、死亡率(ICU内:29.3 vs 25.1%)は両郡とも有意差なし
- 合併症としてはLTV群でせん妄発症率高め(43.4% vs 36.6%)
- 鎮静薬・鎮痛薬・筋弛緩薬投与量は有意差なし
- 血行動態に関わるものも有意差なし
結論
28日目Ventilator free daysは有意差なし
死亡率、滞在率、合併症などにも有意差なし
→非ARDS患者である人工呼吸器装着ICU患者への一回換気量制限戦略は、中量換気戦略と比較して人工呼吸器のない日の数、および28日目生存率において有効とはいえない
スポンサードサーチ
まとめ
今回の結果を踏まえると、非ARDS患者に対する人工呼吸器管理に関しては、無理に1会換気量制限4-6ml/kg×予測体重を行わずに、通常通りの6-10ml/kg×予測体重で管理するほうがいいと思われますね。
意味なく違った設定は看護師の負担が増えるだけな感じもしますし。
ただ、間質性肺炎やARDSのような肺には肺保護の考えは必須ですし、逆に拘束性障害には換気量増加もしないといけない。
症例ごとにコンプライアンスなどを考えられる基礎知識をもっている必要はありますね。
JAMAに掲載されている良質な論文であり、勉強になりますので、詳しく確認したい方は、是非以下の原著論文をご確認ください。
Simonis FD, Serpa Neto A, et al. JAMA. 2018 Nov 13;320(18) PMID:30357256